世田谷区には、小田急線梅ヶ丘駅近くに、日本で最初に開校した肢体不自由児の学校である東京都立光明 特別支援学校(旧光明養護学校)があります。その関係で、全国で障がいのある人が一番多く住んでいると 言われています。区内にはその他の福祉施設も数多くあり、以前から「まちづくり」などの住民参加による 福祉活動が盛んです。
このような私たちの地域では、60年以上も前から地域の人々と障がいのある人との交流が生まれ、ともに 支え合う関係が育まれてきました。その積み重ねの結果、最近は各地の商店街でも障がいのある人が自然 に買い物をする姿が見られたり、日常的に鉄道やバスを利用することが出来るようになりました。普段か ら身の回りの世話を家族だけに頼るのではなく、様々な福祉制度やヘルパーの派遣などを活用しながら、 地域で大人として当たり前に暮らす障がいのある人の数も、全国で一番多い地域であるとも言われてい ます。
福祉的な環境が比較的整っていると言われている世田谷区でも、 重い障がいのある人の多くは、身の回りの世話を家族のみに支 えてもらうしかなく、なかなか自由に外に出てこれないばかり か、トイレや入浴など生活していく上でガマンせざるを得ない 現実があります。こうした状況の中で、私たちは「障がいの種別 や程度に関わりなく、誰もが胸を張り、安心して生活できる地域 社会の創造を通して、社会福祉の発展に寄与する」という理念の 下で、地域の障がいのある人や家族に対する様々な支援活動に取 り組んできました。
現代は「格差社会」が問題にされ、障がいのない人たちにとって も生き難い世の中です。子供たちのいじめや中高年の自殺など の深刻な問題が続く中で、切実に「お互いを大切にしながらとも に支えあう社会の実現」が求められています。障がいのある人や 家族を支えることは、地域住民の相互関係を変え、人に優しい「と もに生きる社会」を目指すことにつながると考えます。